4.「フレンドシップ事業」による体験的な学び

「学びクラブ」の概要と教育的効果

「学びクラブ」は,なぜ必要か?

 今,教師には教科指導力もさることながら,子どもたち一人一人と心を通わせ,生き生きとした学級を組織していく力が特に求められています。少子化の中で育った学生達にとっても,その力を付けることが大きな課題であります。確かに教育実習でも子どもとかかわりますが,あくまでも学級担任の経営下に入るので,常に側面的な援助によって支えられています。その意味から,教員養成課程において,素顔の子どもたちと接し,望ましい子どもたちの関係や子どもたちと自らの関係を構築していく経験は大変重要です。
 本学では平成10年に導入しましたが,年々,学生たちの意見によって改善がなされてきています。

どうして,学生の自主活動なのか?

 当初から授業科目とすべきではないかとの意見がありました。しかし,学生たちには,「単位を目的に義務感で参加して欲しくない」と主張し続けてきました。大学としてもフレンドシップ委員会を設け,全面的な支援をしています。近年では何よりも地域の期待の高まりは大きいものがあります。当然,大学の事務員や教員の子どもも,多く参加しています。

どのように展開しているのか?

 企画,準備,運営の全てを学生事務局にゆだねています。春,新入生ガイダンス後,参加希望学生を新たに加えてクラブを編成するとともに,地域の小学校を通して家庭に案内が配付されます。
 登録した学生と児童が,年間7回のふれ合い活動を展開しています。6回はキャンパスを開放して終日大学での活動ですが,1回は夏休みを利用して2泊3日の宿泊交流を行っています。各クラブの学生は,ふれ合い活動の企画,リハーサル,準備等をして,子どもたちを迎い入れますが,もっとも神経を使うのは子どもたちの健康管理です。保護者から健康カードを集約して,個々の状況の把握に努めています。宿泊交流では緊急マニュアルを作成し,夜間巡回もしています。
 平成19年度の参加学生は約200名,児童は約300名前後でした。

「学びクラブ」の教育的効果は?

 スタート当初は,「子ども達と接して楽しかった」で終わる面がありました。それはそれで,自分は子どもとかかわることが好きであるという自己の適性の自覚に繋がりますが,もっと個々の子どもに寄り添って理解を深め,子ども集団を生き生きと組織していく力をもつには,自らの関わり方を常に省察することが大切です。障害をもつ子への対処には専門的な学習も必要です。そのため,平成14年頃から「省察と実践と学習の統合」を合い言葉に,活動後の振り返りを大切にしてきました。
 子どもとの年間を通しての触れ合いの中で,確かな変容と成長がみられ,学生シンポジウムなどではその感動を熱く語っています。「子どもは,素晴らしい勉強の提供者,感謝して接しよう!」という言葉が自然に生まれてきました。
 初めて子どもと接する場合に,学生はどうしても迎合的になります。密着しすぎ,まとわりつく子への対応に苦慮することや,個に目が奪われ全体が見えないこと,扱いづらい子や接触しても反応の得られない子を回避する傾向にあります。そこを指摘することで,表面的に接して子ども理解ができたと満足する学生に,気付きを促しました。
 経験の積み重ねの中で,仲間の成功事例に学び,試行錯誤しながら場と状況に応じた話し方や表情,接し方を体得していくのです。


宿泊交流での朝の集い