テーマ別編 中学校 3/10
多民族・多文化のアメリカ合衆国(エスニックグループの生活)
上越教育大学・院 社会系
(長野県須坂市立相森中学校) 麻田正明
(2) ピッツバーグ市
ユダヤ人コミュニティセンター正面 [1] ユダヤ人集住地区  ピッツバーグ市の中心部からやや離れた東部丘陵地スクウィール・ヒル(Squirrel Hill) 地区はユダヤ人の集住地区になっている。リトルイタリーやチャイナタウンでは飲食店が軒を並べ、あちこちに母語の看板が目立ち一目でそのエスニックの街であることがわかるのに対して、ここではそのような商店街はない。数年前までユダヤ人のパン屋(ユダヤ人のパンであるレヴィーを売っていた)が一軒あったが、高齢のため店をやめてしまったとのこと、ユダヤ人の食文化に直に触れられるような特徴的な飲食店は見つけられなかった。
写真-3 ユダヤ人コミュニティセンター正面
 ユダヤ人街の象徴するものとしてコミュニティセンター、学校、教会を見学した。教会の真向かいのコミュニティセンターは、ヘブライ語の文字盤の時計台が目を引く。入り口の右手には合衆国旗が、左手にはユダヤ教の燭台がおかれている。「アメリカに住むユダヤ教で結ばれた同族」という民族意識を主張しているような印象を持つ。内部は単に会議室の並んだ公民館ではなく、託児所や図書館、医療施設、高齢者福祉センター、はては室内プールまでもが備えられている。夏休み中には幼稚園から高校までのいろいろなレベルの教育プログラムが実施される。広い通路がサロンになっていて大勢のユダヤ人が行き来し、集っている。利用者層としては高齢者が多かった。
スクウィールヒル  迫害から逃れてアメリカに移民してきたユダヤ人も多く、向かいの建物内には小規模ながら写真とパネルによるホロコースト展示コーナーも設けられていた。かつて教会が火事になったことがあり、そのとき高齢者の中にはホロコーストの再来だとかなりの精神的ダメージを受けた方が多く出たという。住宅は郊外の白人の住宅に比べるとさほど大きくはなく、一戸建てより3〜4階建ての集合住宅が多く並んでいる。
写真-4 スクウィールヒル(ユダヤ人地区)の集合住宅