テーマ別編 高等学校 4/6
交通から見たアメリカ合衆国
上越教育大学・院 社会系
(秋田県立秋田中央高等学校) 渡辺義人
 教材として考えると、5大湖周辺を含む北米の工業や地誌の学習のとき避けられない水運の門題、特に閘門の写真教材は有効である。日本では目にすることは少なく、規模も小さいことや、教科書等ではなかなか写真や図で説明するスペースが取れないこと、などから教師側からも歓迎されるものである。(写真―4)
 以上は、自動車交通を除けばおもに、遠距離の都市と都市の間の交通に関するものであった。
アレゲニー川の閘門
写真-4 アレゲニー川の閘門
 それに対して、今回、ボストンでMassachusetts Bay Transportation Authority(MBTA、マサチューセッツ州湾公共交通局)から、ボストン地区における都市内の総合交通システムについて資料収集、説明を受けることができた。
 冒頭の交通の分類の中で言えば、*印のついている交通機関の管理運営を行っている。 MBTA(http://www.mbta.com) は、ボストンコモンのすぐ近くのトランスポーテーションビルに本社機能が集中している。
 情報の開示も進んでおり、各種の統計等が、市民に解放されている。
 MBTAでは、1998年度の目標を4つ設定している。
 1.顧客サービスと顧客満足を高める。
 2.市民の権利と従業員の生活の質を高める為に積極的に取り組む。
 3.コスト削減と能率をあげることに努力する。
 4.MBTAのインフラを整備し、サービスを拡大し、州の経済的成長と発展をサポートする。
(MBTA1998予算書より筆者訳)
 公共交通機関として、市民と従業員の権利を考えているところなど、公民権が確立しているアメリカ合衆国ならでは、と感じられる。
 地理の教材開発ということで、調査をしたわけであるが、公民科の教材にもなるのではないか。権利と義務を考えさせる教材になり得る。
 1998年度の歳入に関しては、1997年度に比較して、1億5300万$アップ。事業としてコミューターレイルの路線を4.8%延長。経費と人件費を抑えて、車両の整備費を増加させ、事故率を減少させる。そして、最終的には歳出抑制を目標に掲げている。
 一日の平均乗車数は、75万人(図―1)。平均故障率は、3万5千に一回(図―2)。
 運賃収入は、地下鉄とバス:コミューターレイルが2:1の割合である(図―3)。
 地下鉄は、MBTAの中心である。ボストンでは地下鉄を○Tと表示する。インフォメーションでの聞き取りでも、「Subway」と発音しなかった。タクシードライバーも「Subway]といったら、なんのことかわからず、「サンドイッチか?」という答えが返ってきた。