記録編 ピッツバーグ 2/4
ペンシルバニア州立大学インディアナ校
(埼玉県春日部市立武里中学校) 大島 薫
2 「地理ナショナル・スタンダード」の実際
(1) 「地理ナショナル・スタンダード」とシェリー先生
 今回お会いしたインディアナ校のシェリー先生(Dr. Ruth Shirey)は、「地理ナショナル・スタンダード」作成の中心的な存在である。NCGEの本部のあるインディアナ校でこの協議の重責を10年あまり担っておられる先生は、とてもおだやかで上品な女性であった。シェリー先生から直接「地理ナショナル・スタンダード」の概要について聞く機会がもてたことは、私たちにとって大変意義深いことである。
シェリー先生
穏やかな口調で説明してくださる
シェリー先生
 (2) 「地理ナショナル・スタンダード」とは?
 「地理ナショナル・スタンダード」は他の教科のナショナル・スタンダードと同様にK-12(幼稚園・就学前の1年間の教育から12年生、すなわち日本の高等学校3年生まで)の13年間を、「K(幼稚園)―4年生」「5年生―8年生」「9年生―12年生」の3つの発達段階に分け、それぞれの最終学年修了時に学力テストを実施することを前提としている。
 地理教育の18のスタンダードは以下の通りである。
[1] 空間的認識(1) [2] 空間的認識(2) [3] 空間的認識(3)
[4] 場所と地域(1) [5] 場所と地域(2) [6] 場所と地域(3)
[7] 自然的システム(1) [8] 自然的システム(2) [9] 人文的システム(1)
[10] 人文的システム(2) [11] 人文的システム(3) [12] 人文的システム(4)
[13] 人文的システム(5) [14] 環境と社会(1) [15] 環境と社会(2)
[16] 環境と社会(3) [17] 地理的認識の効用(1) [18] 地理的認識の効用(2)
 また、「地理ナショナル・スタンダード」では5つの地理的技能(Geographic Skills)を挙げ、先の18スタンダードについてどのような技能をそれぞれの発達段階で身につけさせるか詳細に述べている。さらに、4つの地理的視点(Geographic Perspectives)の重要性についてもあわせて言及している。
 (3) 「地理ナショナル・スタンダード」の特徴
 この「地理ナショナル・スタンダード」は、知識・理解、技能の到達目標が各発達段階に応じて具体的に明記されている。これらは「K(幼稚園)―4年生」「5年生―8年生」「9年生―12年生」のそれぞれの最終学年修了時に学力テストを実施することと関係している。学年ごとの配列はいずれも発達心理学、認知心理学の影響を色濃く受けていることがうかがえる。知識・理解、技能の習得がのちに課題解決型の学習方法につながっていくように配列されているのである。系統的に配列された「地理ナショナル・スタンダード」は、今日の日本の地理教育にも大きな示唆を与えるものだと言えよう。