テーマ別編 高等学校 7/8
「アメリカ合衆国の歴史」をどのように教材化するか
筑波大学附属高校 田尻信市
ビーバー2世

勝利の歓声を上げる観客
[4]マサチューセッツ州コンコード
     :「全世界に響きわたって発砲」
独立戦争の勃発地(1775年)

 コンコードはボストンの北西30キロメートルに位置する。ボストン北駅からコミューターレイルを利用して約45分で到着する静かな町である。しかし、ここは「全世界に響きわたった発砲」の言葉で有名な独立戦争勃発の地である。また、郊外にはH.D.ソローが隠遁生活を送ったウォールデン湖があり、アメリカ文学のふるさととしても名高い。
 1775年4月、イギリス軍はコンコードの武器庫から武器を撤収するために、ボストンから同地へ赴く途中に、レキシントンの原野で植民地民兵の抵抗に遭い、独立戦争の幕が切って落とされた。レキシントンでイギリス軍は民兵の抵抗を難なく退けた後、コンコードで若干の武器を押収しての帰途、植民地民兵が同地のオールド・ノース橋で待ち伏せしていたため300名近くの死傷者を出し、やっとのことでボストンに帰還した。
 今日、橋のふもとにはミニット・マンと呼ばれた植民地民兵の像がたっている。この橋の周辺一帯はミニット・マン国立公園として整備されている。コンコードの戦いの後、マサチューセッツの愛国派は全面的武装闘争を決意し、また、植民地議会もイギリス軍に対抗するために3万人の軍隊を組織する必要を認め、マサチューセッツがその内1万3600人を分担することになった。以後、8年間に及ぶ独立戦争をボストンを中心とするマサチューセッツが支えていった。
(写真11上) 東インド会社船を復元したビーバー2世号
(写真12下) 船上から積み荷を海中に投げ込み、勝利の歓声を上げる観光客(ボストン茶会事件船・博物館)