上越教育大学 教員養成GPプロジェクト

図画工作科・美術科を授業の中心に据えた学びの成り立ちや支援の在り方の研究

取組実績と課題

4.平成18年度「造形表現カリキュラム開発特論」議事録

平成18年11月20日 共同研究授業の活動案について

□活動案についての討論

飯田:クリスマスで遊ぼうという案を挙げました。ただし,クリスマスということに捉われてしまいそうだと思った。自分の一歳半の息子が積み木など叩く様子を見て面白いと思った。

天野:クリスマスは宗教行為ということもあるので,別の案がいいと思った。でも12月ということを活かしたい。2月3月は1年間どうだったかという振り返りをするので,1年間の学級の成長を表現させたい。子ども同士のかかわり合いを重視し,「廃材で作り上げる学級の成長」を考えた。廃材として木をイメージしているが,他のものでも可。授業後の協議会が重要だと思う。

岩垣:「トントンギコギコ」を提案します。作品を作る過程で発想豊かに楽しみながら展開することが理想。材料は何でもいい。価値のないと思われているガラクタから材料に価値や意味を新たに見出していくことがよいと思う。活動終了後に自己反省ノートを書かせたい。

柳澤:「今年お世話になった人へ贈り物をしよう」というテーマ。お世話になった人を子ども達に想定してもらい,その人への感謝の気持ちを形に表現してもらいたい。

野澤:「クリスマス通りをつくろう」というテーマ。自分達の教室の前の廊下の飾りつけをする。飾り付けの形式は自由。素材はアルミホイル,ダンボール,ストロー,紙コップ,サランラップ,新聞紙,毛糸,麻ひもなど。自分以外のクラスの廊下を見て回ることで,子ども達にまた違った意味が生まれるのではないか。

高石:12月中に授業を行いたいので,クリスマス前になると思う。

飯田:天野さんの案は,成長を造形にすることですか?

天野:今年1年印象的だった出来事,自分の内面など文字にしづらいものがある。かなり枠は広い。

南:そんなに固く考えなくてもいいのかなと思う。子ども達は言葉も交わさないけど,大人が用意すること以上に材料を見るだけで何かを読み取って進めていく。先回の話で作文の話題が出たが,作文を書かせても,字面だけでその子どもの思いを読み取れるとは限らない。自分の本当の思いを正確に表現できているかどうかは疑問。小学校の頃は道徳以外でも命にかかわる勉強はたくさんしているのに,自殺者が多くなっている。授業で「命は大切だ」というようなことを色々書かせているのに,子どもはすぐに自殺してしまう。とりあえず書かせているが,その書いていることが子どもたちの本当の言葉なのかと疑うべきである。

飯田:天野さんの案と岩垣くんの案は似ていて,柳澤さんと野澤さんと僕の案は似ていると思う。

西村:天野さんと柳澤さんの案は「今年」つながりで似ている。「贈り物をしよう」は具体的で考えやすい。

天野:贈り物のことについてですが,先に誰に贈り物をするかというイメージをはっきりさせてから活動するのですか?

柳澤:事前に活動内容を知らせ,誰に贈るかを想定させておきたい。

四ツ目:テーマにこだわって,コンセプトにこだわりすぎていると思う。  

松本:造形遊びをやるとすれば,テーマはすごく重要である。柳澤さんの案は,テーマが主題的である。しかし造形遊びでは,活動を呼びかけたり,きっかけを与えたり,方向付けたりするテーマが多い。こういうものを作ろうということではなく,活動そのものの中で素材とかかわって,次から次へと様々な発想が生まれてくる方がいい。活動していく可能性が大切。

岩垣:音楽について考えた。ギターやベースを持ってきてセッションをする。ジャマイカみたいな自由性の高い音楽活動は造形遊びになるのでは?流木やロープなどで楽器を作ってみたら面白いと思う。

高石:先回の「トントンギコギコ」を見ていて,木に釘を打つことだけで色々な形ができてくることに新鮮さを感じた。

日永:遊んでいるうちに勝手に子どもが学級の成長を振り返ったりするのはいいと思うが,教師側が「この廃材を使ってこういうことを考えて欲しい」というテーマは造形遊びではない。素材とかかわっているうちに考え,試行錯誤することが造形遊びだと思う。廃材(流木)と釘などがいいと思う。

南:僕は単純な活動の方を好む。単純な活動では,子どもたちが自分の世界に浸るまで時間がかかるが,いったん入ったらのめり込んでいく。逆に教師が主題を持って活動を行うと,時間はかからないが子どもたちの飽きるのが早い。単純な方が,感想を書かせても広がりのある文章を書く活動になると思う。

四ツ目:シンプルなのがいい。どしっと構えて。前の大学にいた時,きっちり目標を決めることがいいと思っていた。だけど,構えても構えても何も進まない時がある。いい意味で適当な感じがいい。教師が作らせたいものと,子どもがつくり変えていくものは必ずしも一致しない。岩垣さんの「子どもが考えている過程を我々が見る」とは,具体的にどういうことですか?

岩垣:考えている時は見てわかると思う。子ども達は何もしていないようでも木材を触っているだけで考えていると思う。

四ツ目:他人には子どもが考えていることはわからない。

松本:子どもを瞬間的に見てもわからない。その行動の前後の文脈を見ればある程度予想できる。人の心はわからないものだと決め付けることは論理的に矛盾がある。大事なのは子どものこうしたいという考え方とつくっているものが,変化していることを考える視点。

飯田:自分の案には何のこだわりもない。シンプルなのでいいと思う。

西村:造形遊びの定義について,あまりこだわらなくてもいいのでは。目的がはっきりしていないものを提案する流れになっている。これは,あれと違うという議論は意味がない。行為から行為へと展開していくことは,様々な行為の中に共通に存在する。

高石:造形遊びはどこにでもあるという南先生の話が印象的だった。題材は何でもいい。テーマの設定というよりも,活動の中で何が大事なのかを詰めていくことが重要だと思う。

天野:マルチコラボレーションでは,現職の人がストレートの学生から学び,ストレートの学生が現職の人から学んだことを大事にする。

高石:色んな考えを持った人同士の交流が重要。

日永:今日の話し合いで,教師が主題を設定するのではなく,子ども達が作る過程で色々変化していくような活動案がいいという結論になりました。