「学校支援プロジェクト」科目のシラバスモデル

 教職大学院のシラバスは、設置申請と認可の過程で確定し、平成20〜21年度はそれに従って忠実に実施される。運用上の問題点はいくつか出てきたが、規定上必要な改善点は特に明らかになっていない。ほぼ設計通りで問題がないことが確認されたと言える。しかし、専門職大学院GPにおける試行及び初年度実施の過程で、補完的に必要と思われる実際上の知見が得られた。それをまとめ、平成22年度でのシラバス改訂に向けた資料とする。

設置認可時におけるカリキュラム(抄出)

 設置認可時の学校支援プロジェクト関連科目のカリキュラムは次のような形になっている。対象やコースによって多少の違いはあるが、中核的な部分は変わらない。

コース別選択科目

(1) 教育実践リーダーコースのシラバス  運営リーダーコースもほぼ同様

授業科目 授業科目の内容
教育実践
リフレクションI

【授業説明、授業方法】
  本科目は、実習科目「学校支援フィールドワーク」での経験を、自ら学校における課題に主体的に取り組み解決する即応力を培うため、実習での活動計画の立案に加え、学校における教育実習での経験を、反省的に意味づけるための科目である。
 本学教職大学院における実習は、受講者の明確な課題意識の基に、主体的に学校運営や学級運営に関わり、実習校の責任ある一員として参加する、高度に専門的な「実務実習」である。実習の活動計画においては、受講者個々の指導力の向上だけでなく、所属する学校全体或いは地域の学校全体の教育力の充実につながる視点を組み込むものとする。実習中においても実習校の指導教諭とともに、担当教員が随時指導するものとする。また、共通に扱われる内容として「教科学習」「特別活動」及び「生徒指導・進路指導」の省察を必ず行い、授業実践能力の向上に資するものとする。
 なお、授業は、複数の教員が独立して授業を担当する独立方式で行う。
 本科目は、「学校支援フィールドワークT」と連携し、1年次の後期に開設する。

【注】授業の実施時期及び実施場所等は、学校支援フィールドワークの形態及び連携協力校の実態に応じて、柔軟に対応する。
  基本的に1〜10回は実習前に行う。11〜20回は実習期間中に行う。

授業題目 授業の概要
1 オリエンテーション  本演習の内容、授業方法に関してのオリエンテーション及び学校支援フィールドワークに関するオリエンテーションを行う。
2 学校支援フィールドワーク課題の設定[1]  学校支援フィールドワークで各自が課題設定をするために、教科指導領域に関する具体的項目を例示し、課題設定をする。更には、観察の視点や方法を明確化する。
3 学校支援フィールドワーク課題の設定[2]  学校支援フィールドワークで各自が課題設定をするために、学級経営及び学校経営に関する具体的項目を例示し、課題設定をする。更には、観察の視点や方法を明確化する。
4 学校支援フィールドワーク課題の設定[3]  学校支援フィールドワークで各自が課題設定をするために、生徒指導及び進路指導に関する具体的項目を例示し、課題設定をする。更には、観察の視点や方法を明確化する。
5〜6 連携協力校の実態と教育課題の把握  連携協力校の担当教員と事前打ち合わせを行い、学校の実態把握と教育課題を理解する。
7〜10 連携協力校の教育課題に対する支援案の作成  連携協力校のもつ教育課題を解決するための、理論的枠組み、方略及び支援の評価方法等を立案する。
11〜20 学校支援フィールドワーク期間中のリフレクション  学校支援フィールドワーク期間中に行う講義である。学校支援フィールドワーク課題に関する分析を行う。また、学校支援に関する教育実践活動を振り返ることで課題を明確にし、以降の活動改善を立案する。
21〜22 ワークショップ  学校支援フィールドワークの成果について討議する。
23〜26 学校支援フィールドワーク課題に関する総括  受講者各自が設定した、学校支援フィールドワーク課題の分析と考察を行う。
27〜30 連携協力校の教育課題への支援に関する総括  連携協力校の教育課題への支援の分析と考察を行う。
【成績評価の方法】
 成績は、次の事項をもとに総合的に評価する。
 (1) 討議における質疑内容
 (2) 期間中随時提出させるミニレポート
 (3) 授業修了後に提出させる最終レポート
 評価は、担当教員がそれぞれ個別に行い、以上の評点を加算する。ただし、最終レポートを共同作成した場合は、(3) はグループとして評価し、その点数を個人として評価し、(1) 及び(2) に加算し評価する。評価においては授業実践に関わる部分を中心に行うものとする。
教育実践
リフレクションII
【授業説明、授業方法】
 本科目は、「教育実践リフレクションT」を踏まえ、より深い省察を行うものとし、実習科目「学校支援フィールドワーク」での経験を、自ら学校における課題に主体的に取り組み解決する即応力を培うため、実習での活動計画の立案に加え、学校における教育実習での経験を、反省的に意味づけるための科目である。
教育実践
プレゼンテーションI
【授業説明、授業方法】
 本科目は、実習科目「学校支援フィールドワーク」での経験を、リフレクション科目で反省的に意味づけた結果を、伝えることによって学ぶ科目である。
本学教職大学院における実習は、受講者の明確な課題意識の基に、主体的に学校運営や学級運営に関わり、実習校の責任ある一員として参加する、高度に専門的な「実務実習」である。また、受講者個々の指導力の向上だけでなく、所属する学校全体或いは地域の学校全体の教育力の充実につながる視点が組み込まれている。この趣旨を生かしたプレゼンテーションを行う。
 受講者及び実習校(クラス)によって課題が異なるため、実習の内容については様々である。それに伴い連携するリフレクションで扱う内容も様々である。しかし、受講者によって学習内容に著しい不均衡を生じさせないよう、共通に扱われる内容として「教科学習」「特別活動」及び「生徒指導・進路指導」の省察に関するプレゼンテーションを必ず含むものとする。
 なお、授業は、複数の教員が独立して授業を担当する独立方式で行う。
 本科目は、「学校支援フィールドワークT」と連携し、1年次の後期に開設する。
授業題目 授業の概要
1 オリエンテーション  本演習の内容、授業方法に関してのオリエンテーションを行う。
2 プレゼンテーション の技法  教育実践に関する、プレゼンテーションの構築、表現に関する理論及び方法を論じる。
3〜6 プレゼンテーシ ョン資料の作成  学校支援リフレクションでの総括をもとに、プレゼンテーション資料の作成を行う。
7〜8 プレゼンテーシ ョン及び討議  学校支援フィールドワークでの成果をプレゼンテーションするとともに、その内容及び方法をグループで討議する。
【成績評価の方法】
 成績は、次の事項をもとに総合的に評価する。
 (1) 発表における発表内容
 (2) 発表における発表方法
 (3) 発表後の討議における質疑内容
評価は、担当教員がそれぞれ個別に行い、以上の評点を加算する。ただし、共同で発表した場合は、(1) 、(2) はグループとして評価し、その点数を個人として評価し、(3) に加算し評価する。評価においては授業実践に関わる部分を中心に行うものとする。
教育実践
プレゼンテーションII
【授業説明、授業方法】
 本科目は、「教育実践プレゼンテーションT」を踏まえ、より深い省察を行うものとし、実習科目「学校支援フィールドワーク」での経験を、リフレクション科目で反省的に意味づけた結果を、伝えることによって学ぶ科目である。

実習科目

授業科目 授業科目の内容
学校支援
フィールドワークI
(ストレート)
【授業説明】
 1年次に連携協力校において履修する実習科目である。即戦力となる新人教員の養成のため、連携協力校において教壇実習を中心に実習しながら課題を遂行する中で、教師としての使命感・自覚を身に付けるとともに、子ども理解に基づいて授業計画力、授業指導力、授業分析力を養うことを目的とする。
【授業方法】 
 授業は、複数の教員が独立して授業を担当する独立方式で行う。
 受講者は、連携協力校にティームティーチングないしは補助教員として参与させ、連携協力校の実情に応じて設定された課題等(教育実践リフレクションにおける計画等)の解決をさせる。
【授業の流れ】
 学校支援フィールドワークの実施については、次の流れで行う。
 (1) 年度当初に受講者と実習担当教員を決定し、連携協力校と打ち合わせを行う。
 (2) 随時協議を行い実習の研究テーマと方法を定める。
 (3) 実習開始2週間前に連携協力校に受講者と実習担当教員が連絡をとり、学校支援フィールドワーク個別計画表を提出、打ち合わせを行う。
 (4) 実習終了後、実習担当教員が連携協力校と連絡をとり、実施状況について意見を求める。
 (5) 具体的には、週2日を連携協力校での実習を行い、3日間は分析と実践の準備にあたるようなパターンから、週5日の実習を行い、間に2週間程度の学校支援リフレクションの期間をおいて後半を行うパターンなどによる。
【成績評価の方法】
 評価は実習担当教員が行い、学校支援及び自己の設定した課題に対し、研究課題の設定と研究課題の質、研究計画の策定とその実現可能性、研究推進の方略、具体的研究活動の展開、研究成果のとりまとめ等を評価する。
学校支援
フィールドワークII
(ストレート)
【授業説明】
 2年次に連携協力校において履修する実習科目である。この科目は「学校支援フィールドワークT(ストレート)」を踏まえて、引き続き継続し、連携協力校において教壇実習を中心に実習しながら課題を遂行する中で、教師としての使命感・自覚を身に付けるとともに、子ども理解に基づいて授業計画力、授業指導力、授業分析力を養うことを目的とする。
学校支援
フィールドワークI
(現職)
【授業説明】
 1年次に連携協力校において履修する実習科目である。指導的立場の教員を育成するため、学校において学校の授業・教育研究を支援したり、教育実習生の実習を実習校教諭とティームティーチング等を組みながら支援する実習を中心に実習し、教育実践リーダー及び学校運営リーダーとしての子ども理解に基づいて即応力(授業計画力、授業指導力、授業分析力を含む。)を培う。
学校支援
フィールドワークII
(現職)
【授業説明】
 2年次に連携協力校において履修する実習科目である。この科目は「学校支援フィールドワークT(現職)」を踏まえて、引き続き継続し、指導的立場の教員を育成するため、学校において学校の授業・教育研究を支援したり、教育実習生の実習を実習校教諭とティームティーチング等を組みながら支援する実習を中心に実習し、教育実践リーダー及び学校運営リーダーとしての子ども理解に基づいて即応力(授業計画力、授業指導力、授業分析力を含む。)を培う。
学校支援
フィールドワークII
(特別)
【授業説明】
 2年次に連携協力校において履修する実習科目である。この科目は「学校支援フィールドワークT(特別)」を踏まえて、引き続き継続し、指導的立場の教員を育成するため、学校において学校の授業・教育研究を支援したり、教育実習生の実習を実習校教諭とティームティーチング等を組みながら支援する実習を中心に実習し、教育実践リーダー及び学校運営リーダーとしての子ども理解に基づいて即応力(授業計画力、授業指導力、授業分析力を含む。)を培う。

GPでの試行・初年度実施に基づくシラバスモデル作成・実施に向けた補完的知見

  • 連携協力校の決定は、GP1年目における試行では、時間的制約の中で、上越市教育委員会の主導で、「夢づくり学校提案活動」との連携という形で行ったが、実際には、アドバイザー(教員)および院生の関心領域との整合性を十分に検討し、受け入れ学校側の意向を調査した上で、設置計画に沿って丁寧に行う必要がある。初年度は、「夢づくり学校提案活動」との連携を重視したが、2年目では、希望する学校の意思表示を明確に受けたものとする。妙高市は初年度、校長からの希望調書をもとに選定した。
  • 校長の意向と直接担当教員の意向は完全には一致していない場合もある。グランドデザインや市教委のプログラムに対応したプランばかりでなく、研究主任などの手になる校内研究計画などとの整合性を図る必要がある。
  • 連携協力校決定後、特任教授とアドバイザーが協力して、学校との連絡調整にあたる必要がある。特任教授の教務上の位置づけの検討も必要である。
  • 特に、プレゼンテーションのあり方については、公開研究会などの学校側の意向も踏まえて、プランをたてる必要がある。どの程度の範囲に公開するか、一度で良いか、数次にわたるかなど、具体的に想定しておく必要がある。
  • 連携協力のあり方については、校長によって考え方が異なることが想定されるし、教師集団の意識が一致しているとは限らない。具体的に誰を窓口として、どのような連携体制をとるかは、学校によって異なるのが実態である。学校支援プロジェクトの趣旨を十分理解してもらうのは当然であるが、協力校の実態に合わせた対応が必要である。
  • 学校支援プロジェクトは単年度ごとに結果が集約されるべきものであるが、長期的な展望の上に立った検討が求められるテーマも多い。院生にとっても協力校の教員にとっても、過剰な負担にならないよう配慮する必要がある。e-box でのポートフォリオでは、活動時間の集約がなされているが、ばらつきが大きい実態がある。
  • テーマによっては、リフレクションの段階で、協力校の教員が何らかの形で参加することが必要な場合がある。これも過重な負担にならないよう配慮しながら、適切な形で実施する必要がある。
  • 学校によっては、院生よりもアドバイザーの支援を強く要請する可能性がある。支援の主体性はむしろ院生にあることを確認しつつ、フィールドワークの計画をたてることが必要である。
  • プレゼンテーションにかかる報告のあり方は、多様であり得るが、学会などにおいて発表する場合は、チームにおける協働を反映したものであると同時に、協力校側教員との協働を反映したものとなるよう配慮する必要がある。発表のあり方についても連携協力校と協議をする必要がある。
  • フィールドワーク中間での合同リフレクションを設け、他チームの活動など相互に参考にする活動が必要である。
  • 合同での外部に向けたプレゼンテーションの機会が必要である。

具体的な実施モデル

 学校支援プロジェクト関連科目を、具体的なテーマを掲げて実施モデルとしてまとめたものである。今後、プロジェクトの実施を踏まえて精緻化し、シラバス改訂への材料としたい。

支援テーマ:〜の総合学習の単元開発

5月末 連携協力校A校・支援チームA決定
6月 支援チームが学校訪問(3回程度:フィールドワーク)
A校の研究計画の内容・研究体制・これまでの成果と課題・児童の状況・授業の実施時期・支援チームAへの要請事項など、数次にわたり打ち合わせ。
6月〜7月 大学でサポート計画立案(リフレクション)
先行研究調査・チームの分担協力体制の相談
A校にサポート計画(ビデオなどのデータ内容も含む)提案・調整
8月 基礎調査(すでにあるデータの分析や文献調査など:リフレクション)
9月 A校の指導計画とチームAの支援計画のすりあわせ・分担協力体制の相談
10月〜11月 授業の実施・支援
月〜水に授業・支援活動(フィールドワーク)
木・金にデータ分析及び授業準備(リフレクション)
12月〜1月 一次データの二次データへの加工(リフレクション)
データの分析・まとめ(プレゼンテーション)
2月 公開プレゼンテーション開催
どのような活動をしたか・活動の結果(解決できた課題と残された課題)・必要なら次年度にどのような活動をすべきか…
支援活動そのものの意義・成果と課題 どのような準備が必要か(プレゼンテーション)

 今後、デジタルポートフォリオをもとにした実施報告書を集約し、問題点・改善すべき点を洗い出して、3年目でのシラバス改訂に具体的に結びつけていくことが必要である。

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