上越教育大学 教員養成GPプロジェクト

特別支援学級の小集団指導において児童の主体的な課題遂行を高める手だての検討

取組の概要

タイトル

特別支援学級の小集団指導において児童の主体的な課題遂行を高める手だての検討

取組教員 藤原 義博 ・ 村中 智彦
目的  特別支援学級の授業改善を通じて、小集団指導において児童の主体的な課題遂行を高める手だてについて、物理的環境の整備と児童の課題遂行機会を増やす活動の設定の観点から検討した。
概要

 研究期間はX年6月〜X+1年3月。対象とした授業は小学校情緒障害児学級で、知的障害や広汎性発達障害の診断か疑いのある児童4名が参加する音楽。指導者は教諭1名。

 週1回、授業の様子をビデオカメラで録画した。1学期に11日、2学期に12日、3学期に13日の計36セッションであった。

 物理的環境の設定で大きな変更は児童の立ち位置を示すマットの配置であった。セッション1〜2では、児童の立ち位置を定めていなかった。セッション3から、教室前方に指導者や係児童が号令をかける、みんなの前で手遊び歌を発表する立ち位置を示す赤マットを置いた。また、児童が号令に応じておじぎをする、動作模倣をする位置を示す4枚の色マットを扇形に配置した。

 指導者の位置と教示について、セッション1〜11では指導者の定位置を定めていなかった。セッション12〜23では、指導者用の椅子を置き定位置を設定したが、教示は特に定めていなかった。セッション24〜36では、赤マットの上で号令をかける、手遊び歌を発表する児童に対して、号令や発表をする前に「(マットの上に)並んでください」と「気を付け」の言語教示を行った。

 児童の課題遂行機会と課題遂行反応の生起を分析した。課題遂行機会は、2学期では1学期よりも増加し、3学期では挨拶の号令や準備や片付けも含めて児童が全ての活動を遂行した(図1)。手遊び課題における動作模倣反応の生起は全児童で増加した(図2)。自分の色マットに立つ反応の生起は、「並んでください」「気を付け」の教示を行ったセッション24以降、安定して生起した(図3)。

 立ち位置マットという物理的環境の整備によって、児童が分かって動ける主体的な課題遂行は高まり、指導者が行っていた号令や準備片付けなどの係活動や新たな活動機会を設定できることが示唆された。音楽の中心的活動である手遊び課題でも、動作模倣反応の促進が認められた。立ち位置マットが課題遂行の手がかりとして機能するためには、指導者の付加的な教示が必要であることが示唆された。