3.「教育実習」の質的改善

分離方式初等教育実習の評価の方法 〜内省的評価の実施・充実〜

 毎年,全実習生を対象に,研究期間の取組状況を把握するために本実習直前アンケート調査,実習状況や分離方式の評価のために実習後のアンケート調査,全実習校の指導教諭を対象に,その年の実習生の状況や分離方式に対する意見等のアンケート調査を実施しています。
 平成18年度からは,各学生に,教育実習における授業をビデオ撮影させ,授業分析による内省的評価を導入しました。
 平成19年度では,実習前と実習後に,「教育実習ルーブリック」をもとに自己評価をしました。ここでは,「教育実習ルーブリック」は試行段階ですが,学生は観点ごとに自らの実習を省察し,教職に対する自分の取組の成果と課題や変容・成長などを具体的に意識する姿がみられました。
 また,本学では教育実習の1週間後に,1泊2日の合宿セミナーが位置づけられていて,実習生は泊まり込みで教育実習を振り返り討論を行います。教育実習委員はこれに参加して学生への指導・助言をしました。さらには,校長会代表と大学で構成する教育実習連絡会で,校長会側のアンケート調査結果,本学側の調査結果を提示し合って,毎年,その総括も行っています。

平成19年度 学部3年生 初等教育実習の授業 VTR自己評価アンケート結果

 秋の本実習において,実習生は研究授業(学習指導案・細案を書いた授業)を行います。これまでは,ともすればやり放しとなり,授業後の協議会も「よかったね」などとねぎらいで終わってしまいがちでした。平成17年度より,研究授業をビデオに録画し,後で自分で再生して評価するという試みを導入しました。17年度,18年度の2年間をかけて,授業評価の観点や児童の肖像権の問題等を検討し,19年度から完全実施としました。以下,19年度の結果の一部です。

被験者 男68名・女81名(不明1名) 計150名
4…うまくできた  3…だいたいできた  2…あまりできなかった  1…ほとんどできなかった

話し方
人数

グラフ
言葉につまずいたり,「エー」や「アノー」を入れたりせず,スムースに話した。 4 15 10.0
3 73 48.7
2 55 36.7
1 7 4.7
表情豊かに,児童の心を引き込むように話した。 4 14 9.4
3 70 47.0
2 57 38.3
1 8 5.4
学習指導案や教科書でなく児童に目線を向け,反応を確かめながら話した。 4 31 20.7
3 90 60.0
2 28 18.7
1 1 0.7
発問や指示
人数

グラフ
何を答えればよいのか,何を考えればよいのか,それが分かる明確な発問をした。 4 4 2.6
3 62 41.1
2 70 46.4
1 15 9.9
指示が連続しないよう,一つの活動が終わってから次の指示を出した。 4 19 12.6
3 65 43.0
2 60 39.7
1 7 4.6
発問や指示を言い換えたり追加したりせず,簡潔,明瞭に伝えた。 4 3 2.0
3 41 27.2
2 89 58.9
1 18 11.9
児童への対応
人数

グラフ
発言を共感的に受け止め,発言を誘発する雰囲気を作り出した。 4 9 6.0
3 63 42.0
2 72 48.0
1 6 4.0
机間巡視などにより,つまずいている児童に個別に指導をした。 4 32 21.3
3 89 59.3
2 20 13.3
1 9 6.0
教師対一人一人でなく,児童同士の考えを交流させた。 4 15 9.9
3 35 23.2
2 76 50.3
1 25 16.6
展開
人数

グラフ
考える時間,ノートに書く時間などを考慮して展開した。 4 18 11.9
3 81 53.6
2 48 31.8
1 4 2.6
じっくり考えさせ,発言を交流させる山場を作った。 4 6 4.0
3 42 27.8
2 82 54.3
1 21 13.9
本時の学習のねらいは,ほぼ達成した。 4 9 6.0
3 85 56.3
2 49 32.5
1 8 5.3
板書
人数

グラフ
1枚の黒板で授業全体の流れが児童に理解できるように構成した。 4 22 15.1
3 58 39.7
2 52 35.6
1 14 9.6
色チョークや掲示,氏名マグネットなどを使用し,板書を工夫した。 4 28 19.2
3 66 45.2
2 41 28.1
1 11 7.5
誤字がなく,筆順やとめ,はねにも注意して書いた。 4 13 8.8
3 66 44.9
2 61 41.5
1 7 4.8
教師としての私
人数

グラフ
学習指導案を入念に書くことの大切さを実感した。 4 91 60.3
3 48 31.8
2 11 7.3
1 1 0.7
授業中,児童に臨機応変に対応することの大切さを実感した。 4 138 91.4
3 13 8.6
2 0 0.0
1 0 0.0
このようにVTRを活用して自己評価することの大切さを実感した。 4 73 48.3
3 69 45.7
2 7 4.6
1 1 0.7
    【VTR自己評価を通した感想等】
  • 指導案に目をやっている時間が長かった。
  • 声の大きさや喋り方は理想通りにできていたと思う。(2)
  • 客観的に見なければ分からないことが多く,自分の悪い点,これからの課題が明確になった。
  • VTRを見て自分が授業中に考えていたことと実際にやっていたことに差があった。(多い)
  • 発問が曖昧だった。(多い)
  • 話し方が単調だった,抑揚を付けたり表情を変えたりすることが必要。(多い)
  • 時間配分に気をつける必要があると思った。(多い)
  • (前に立っていると予想以上に)周りの状況が見えていないことが良く分かった。(多い)
  • 今まで気づかなかった自分の癖(しぐさ,早口,口癖,話しすぎるなど)が見えた。(多い)
  • 板書計画,黒板をうまく工夫することが必要。(多い)
  • 授業の山場がどこなのか分かりにくかった。(多い)
  • 科目によっては,この自己評価シートは答えにくいように感じた。