3.「教育実習」の質的改善

「総合インターンシップ」の実際,成果・課題

 本学は学部生の教育実習を1〜4年次へと体系的に位置付けていますが,より実践的力量を有する卒業生を輩出すること,採用・臨時採用にかかわらず教育現場への円滑な移行を図ることを目的として,平成17年度に4年次学生を対象にした「総合インターンシップ」を導入しました。
 現場教師の補助者として日々の教育活動に参画し,教科指導,学級経営等についてより一層の理解を深めるとともに,学級の児童生徒とかかわり,教師の日々の職務を実践的に学ぶことができると考えました。

    ○履修の条件
     真に教職を目指そうとする学生で,次の条件をすべて満たす学生としました。
  • 3年次,4年次教育実習の評定がAであること
  • 卒業研究に支障がなく,卒業研究指導教員の推薦が得られること
  • 受入校に応諾されること
  • 受入校の事前指導を必ず受けること
  • 本学が行う指導(事前・中間討論会・最終討論会)に必ず参加すること
  • 決められた期間(9月〜11,12月,週2〜3日)を確実にやりぬくこと

○履修学生数と受入校
 初めての試みとなった17年度は,附属校に受入をお願いし,18年度から公立校にも受入をお願いしました。履修学生の多くは,3年次の初等教育実習校または4年次の中等教育実習校を受入校として希望しています。

年 度 履修生 受  入  校
17年度 7名 附属小(6名)
附属中(1名)
18年度 10名 附属小(5名) 高田西小(1名) 大手町小(2名) 国府小(1名)
附属中(1名)
19年度 9名 附属小(4名) 高田西小(2名) 北諏訪小(1名)
附属中(1名) 直江津中(1名)

○本学が行った指導(事前・中間討論会・最終討論会)
 事前指導の主な項目は,次のようなことです。

  • 本科目のねらい及び激励
  • 履修生の自己紹介と抱負
  • 本科目の概要
  • 研究課題例
  • 履修記録簿の書き方
  • 以前の受入校からの意見や要望
  • 勤務上の諸注意
  • 支援体制

 また,中間討論会や最終討論会では,「中間(最終)振り返り用紙」に記入し,それを基に発表し合い,意見交換を行いました。
 これらの指導の他に,インターンシップ担当者が手分けをして受入校を訪問し,履修学生の活動状況を把握しています。また,履修学生にはE−mailを通じて定期的に状況報告を求めています。

    ○履修学生が受入校で携わった主な職務
     次に示すような職務に携わっています。教育実習期間中とは異なり,実に多肢にわたっています。
  • 授業
  • 授業の補助(特別支援が必要な子どもへの指導,グループ別活動,校外活動引率,自習監督等)
  • 放課後の個別指導
  • 相談室登校生徒への支援
  • 学校行事への参加と指導(マラソン大会の監察,音楽発表会の指導・指揮,作品展示準備など)
  • 朝の会・帰りの会
  • 学級の実務(採点,提出物の確認,生活記録ノートの点検,学習シートの添削,教室掲示,教材教具の準備等)
  • 給食指導
  • 清掃指導
  • 放課後の教室整理
  • 日直業務の一部(施錠・見回り)
  • 電話応対
  • 委員会活動,クラブ活動,課外活動の補助
  • 教育実習生へのアドバイス
  • 授業検討会・協議会への参加

○成果・課題
 受入校の担当教員からの報告書に,次のように記述されています。

  • 教育実習での体験を生かして,自分から仕事を見つけて取り組む姿を見ることができた。担当教師に「他にやることはないか」と尋ねて仕事を求め,教育実習で携わることのできなかった仕事への取組を体験した。教員には教壇に立つだけでなく,様々な仕事があることを実感していた。
  • 学校の職員と協調し,職員集団の一員として自分がどう動けばよいかを瞬時に判断して,できる仕事を精一杯やり遂げた。
  • 生徒に寄り添いながら,積極的に実践的力量を高めようとする姿勢が常に感じられ,大変すばらしい態度であった。明るく謙虚な態度で,生徒と積極的にかかわり,個別指導にも丁寧に取り組んでいた。
  • 学校職員の指導上の工夫や細かい気配りに目を向け,日々記録を取るとともに自分の実践に生かそうとしていた。
  • 4ケ月間にわたって,進んで生徒たちや教職員とコミュニケーションを図っている姿が本当に素晴らしかった。
  • 勉強熱心で,学校にいるときのすべての活動を研修と受け止め,常に自らの在り方を振り返っている様子が記録簿からうかがえた。
  • 授業やそれ以外での生徒とのかかわりでは,よき相談相手になっていたと同時に,生徒指導的配慮を意識して接するようになっていった。
     このような受入校担当教員からの報告書の他に,履修学生へのアンケート,討論会における履修学生の発言内容,インターンシップ担当教員の観察などを総合すると,成果と課題を次のように整理できます。
    (成果)
  • インターンシップは有意義な経験となっていること
  • インターンシップを通して,教師の職務の多さや多忙さを実感していること
  • インターンシップを通して,教職への志望がより強くなっていること
  • 教職に向けて,自分にとっての新たな課題を見付けていること
    (課題)
  • 「事前指導の際に提示した研究課題例を参考にし,主体的に追究を進め,研究を深めた」と回答した学生が半数程度であること
  • 「インターンシップと卒業研究との板挟みで苦労した」と回答した学生が半数程度いること
  • ある程度明確なカリキュラムを示してほしいと感じている受入校教員がいること
  • 履修学生が受入校に出向く日が週2,3日であるため,継続して授業を担当したり,子どもたちの様子を観察したりすることができないこと