心理学を教える

Last Updated on: 2014.07.14.

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■ 基本コンセプト

  「心」は,我々にとってもっとも身近な存在であるはずなのに,そのはたらきはよくわからず,もてあますことも多い。特に思春期は第二次発達スパートの時期であり,身長が急に伸びたり第二次性徴が発現するなど,大きな身体的変化が起こる。それにともない,これまで持っていた自己概念が崩壊し,新しい身体イメージにも見合った新しい自己概念を構築する必要に迫られる。そのためこの時期は,だれもが心理的に不安定になりやすい。一方でメディアからは,心理テストをはじめ,本物の心理学研究とはかけ離れた怪しげな心の情報が,大量に流されている。

  これに対して,教科指導の中で心理学が取り上げられるのは,中学校では「保健体育」,高校では「倫理」などがあるが,いずれもほんの短い記述にすぎない。心のしくみの問題は,もっと生徒に身近なものとして,教科指導の中でも積極的に取り上げる必要があるのではないだろうか。

      ……(中略)……

  これに対して最近の動向に共通するのは,心のメカニズムを科学的な知識として教えよう,という動きである。心のはたらきは,けっして神秘的なものではなく,合理的に説明できることがわかれば,生徒は自分の心を意識的にコントロールし,メディアからの情報にも冷静に対処できるようになると予測される。

中山(2004)『学校心理士の実践 中学校・高等学校編』(北大路書房)より引用

ということで(このアイディアのおおもとは田中敏先生),「心理学のさまざまな理論と知見を,子どもたちに知識として教える『心の授業』を構想しよう!」という活動を,ほそぼそとはじめてみました。

  とはいえ,活動の主役は私ではなく学生たちです。学部授業『授業の心理学』の受講生の人たちに,授業を構想してもらいました。学部3年生で,小学校教育実習を経験済みの彼らですので,きっとおもしろい授業を創ってくれるにちがいないと思ったからです。

  想定は中学・高校生。教えてみたいテーマを自由に選び,それを約20分の授業にまとめてもらいます(生徒の話し合い活動などの部分を短縮しています)。授業の最終日にはみんなで模擬授業。互いに生徒役になりながら授業内容をチェックします。

  はじめての試みでどんな授業ができあがるかちょっぴり心配でしたが,結果は予想を大きく上回り,なかなかの力作ができあがりました。ちょっと私の計算が甘くて,20分の制限ではなかなかていねいに教えられず,駆け足になってしまったグループもあって申し訳なかったのですが,授業の構成だけでなく実習のための各種小道具の準備までしっかりと考えてくれていて,感心しました。

  以下に,それらの授業の指導案(PDF版)を置いておきます。

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■ 指導案

年度 No. 指導案(PDF版) 感想・コメント
13 24 ●処理水準 PowerPoint資料
25 ●認知的葛藤
12 22 ●パーソナル・スペース 資料
23 ●内向・外向 PowerPoint資料
11 20 ●メタ認知(パーソナリティー)
21 ●集団心理(不敗幻想) PowerPoint資料
10 17 ●処理水準 PowerPoint資料
18 ●臨界期 PowerPoint資料
19 ●チャンキングと精緻化
08 14 ●傍観者効果 PowerPoint資料
15 ●処理水準 PowerPoint資料
16 ●内罰と外罰
07 10 ●記憶(忘却曲線)
11 ●長期記憶とチャンキング PowerPoint資料
12 ●バーナム効果 配付資料等
13 ●カクテルパーティー現象 PowerPoint資料
06 05 ●記憶1 コメント
06 ●記憶2 コメント
07 ●自己効力 コメント
08 ●シェイピング コメント
09 ●道徳的葛藤 コメント
05 01 ●学習の動機づけ コメント
02 ●社会的スキル コメント
03 ●ストレス コメント
04 ●良いところさがし【リソースとは?】 コメント


注)07年度から,受講生のコメントは直接各グル
ープに返し,内容を改定してもらっています。
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■ 許可とお願い

  もし,これをごらんになって実際に授業で使ってみたいと思われた方がいらっしゃったら,どうぞ自由にご利用ください。とくに許諾をとる必要はありません。

  実施してみた感想,改善点など教えていただければ,たいへんうれしく思います。また改善した指導案をぜひ送ってください。少しずつ内容をグレードアップしていきたいと思っています。