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ウィズ・コロナの秋(令和3年10月)

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 秋と言えば、皆さんは何を思い浮かべるでしょうか。食欲の秋、スポーツの秋、読書の秋、睡眠の秋など、いろいろありますが、私が真っ先にイメージするのは食欲の秋です。私は、健康維持のため食事制限をしているので、かえって、いつもよりも食欲が増しているのかもしれません。

 「天高く、馬肥ゆる秋」ということわざもあります。秋の収穫の時期には、気候もよく、食欲も増進するように思います。「馬肥ゆる」ということも納得できます。しかし、このことわざの由来を調べてみると、現在の意味とは少し違うようです。

 これは、唐の有名な詩人杜甫(とほ)の祖父杜審言(としんげん)の詩に由来するもので、「雲浄(きよ)くして妖星(ようせい)落ち 秋高くして塞馬(さいば)肥ゆ」という一節から取られたものだそうです。「妖星」は不吉の前兆とされる星のことです。「塞馬」は中国北部の辺境の馬を意味します。つまり、「馬が肥ゆる秋には、元気がある馬に乗った北方の騎馬民族が攻めてくるというような事変が起こる」から警戒しなければならないということを詠んだものなのだそうです。

 国や文化や時代が違えば、詩やことわざの理解も変化するということでしょうか。

 さて、この文章が皆さんの目に触れるころには、新型コロナウイルスのワクチン接種も全国的に相当進んでいると思いますが、変異株も発生しているので、まだまだ安心できる状態ではないかもしれません。そうすると、「ウィズ・コロナの秋」というようなことも考えなければなりません。

 では、コロナに注意しつつ、秋を楽しむ生活としてどのようなことが可能でしょうか。

 たとえば、秋グルメをお取り寄せして食欲の秋を満喫する(ものによっては少し予算がかかるかもしれません)。車で紅葉を見に行く(少人数でお願いします)。美術館に見学に行く(人出が増える時間を避けてください)。日帰りで山歩きをする(里山でも2人以上4人以下程度でお願いします)。

 いっそのこと、自室に籠って、アリストテレス全集や源氏物語を全巻読破するという読書の秋もよいかもしれません(大学の授業には出てきてくださいね)。

 妖星が流れ落ちようとも、私たちの生活は続いていきます。コロナに負けない生活の工夫を重ねていきましょう。

 この文章が活字になるころには、「学長は馬鹿なこと言っているよね。コロナなんかとっくに終わっているのに」ということになっているといいなと願っています。


令和3年10月  
学長 林 泰成 



このページは上越教育大学/広報課が管理しています。(最終更新:2021年10月14日)

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