本教育プログラムでは、教育大学ならではの視点を活かし、初年次教育における情報教育を拡張するとともに、Society5.0や学校3.0といった新しい時代の教育像に対応する人材育成を目指します。データ駆動型社会における機械学習やAI技術の理解と活用能力を備え、教育現場でこれらを活用して課題解決や学びの質向上に寄与できる教員の育成を目指します。
このプログラムは、学校3.0の理念に基づき、これらの技術をリテラシーレベルで活用するための基本的な心得、知識、技術を修得させることを目的としています。また、AI技術を活用して個別最適な学びや協働的な学びを実現するための実践力の育成を重視しています。
なお、本教育プログラムは、文部科学省が設置する「数理・データサイエンス・AI教育プログラム認定制度(リテラシーレベル)」に(2025年度)申請予定です。
将来のデジタル社会において、数理・データサイエンス・AIを日常の生活、学校教育等の場で使いこなすことができる基礎的素養を主体的に身に付ける。
そして、学修した数理・データサイエンス・AIに関する知識・技能をもとに、これらを扱う際には、人間中心の適切な判断ができ、不安なく自らの意志でAI等の恩恵を享受し、これらを説明し、活用できるようになる。
学部1年次必修科目「教育情報科学概論」の2単位を修得すること。
授業に含まれている内容・要素 | 講義内容 | |
(1)現在進行中の社会変化(第4次産業革命、Society 5.0、データ駆動型社会等)に深く寄与しているものであり、それが自らの生活と密接に結びついている | 1-1 | 一般の情報社会での数理・データサイエンス・AIの代表的な技術(モデル化、シミュレーション、ビッグデータ、IoT、古典AI、生成AI、ロボティクス)の意義を知り、過去(Society1.0)から現在(第4次産業革命を経たSociety5.0)までの社会的・歴史的な変化や動向として、データ量の増加、計算機の処理性能の向上、AIの非連続的進化を遂げたデータ駆動型社会を押さえる。 さらに、学校教育での数理・データサイエンス・AIにも目を向け、人間の知的活動とAIの関係性を究めることの意義を知り、過去から現在まで(〜学校3.0)の社会的・歴史的な変化や動向を押さえることを通じて、データを起点としたものの見方、人間の知的活動を起点としたものの見方の双方を自ら知る。 |
1-6 | われわれの生活と密接に結びついている数理・データサイエンス・人工知能の利活用について、ビジネスモデルやテクノロジーの面から知る。AI等を活用した新しいビジネスモデルとして、(商品のレコメンデーションなど)を題材とし、そこでのAI最新技術の活用例(深層生成モデル、強化学習、転移学習、生成AIなど)を示す。 また、教育でのデータ利活用の現場と最新動向として、実際の学校現場での数理・データサイエンス・人工知能の利活用について、ビジネスモデルやテクノロジーの面から知る。特に生成AIを題材とし、基盤モデル、大規模言語モデル、拡散モデルの活用例を示す。 |
|
(2)「社会で活用されているデータ」や「データの活用領域」は非常に広範囲であって、日常生活や社会の課題を解決する有用なツールになり得るもの | 1-2 | 社会で運用されている実データ(調査データ、実験データ)について取り上げ、1次データから2次データを得るための分析手法を知る。さらに、データのオープン化がなされたサイトへ接続し、データセットの利活用の領域や有効となる活用手法を知る。 また、学校教育で運用されている実データ(学習教材等の非構造化データ(文章、画像/動画、音声/音楽など)、学習評価等の構造化データ)について取り上げ、そのデータセットの利活用の領域や有効となる活用手法を知る。学習教材では、データのメタ化の活用事例として、LOM(Learning Object Meta-data)を、学習評価では、個人やクラスの成績処理に加え、人の行動ログデータの活用事例として、学習履歴に基づいたビッグデータとアノテーションを紹介する。 |
1-3 | AI最新技術の日常への活用例(特に対話、コンテンツ生成、翻訳・要約・執筆支援、コーディング支援など生成AIの応用)を調べ,対話型生成AIを実際に活用することで,AIの効果的な利活用およびリスクなどについて発表する(グループワーク)。 また、教育システムにおける数理・データサイエンス・AI技術の利活用(仮説検証、知識発見、原因究明、計画策定、判断支援、活動代替、新規生成など)について最新動向を調べ、それらを教師が日々の学校の中でどのように扱い、教育活動でのデータ・AI活用領域の広がりを得ていくべきか発表する(グループワーク)。 |
|
(3)様々なデータ利活用の現場におけるデータ利活用事例が示され、様々な適用領域(流通、製造、金融、サービス、インフラ、公共、ヘルスケア等)の知見と組み合わせることで価値を創出するもの | 1-4 | AIとは何か,特化型AIと汎用AI,今のAIで出来ることと出来ないこと,認識技術,ルールベース,生成AIの活用(プロンプトエンジニアリング)などAI技術の概要を知る。 また、教育データサイエンスとは何か、認識技術、データ解析、データ可視化、非構造化データ処理、自動化技術など学習分析(ラーニングアナリティクス)のための技術の概要を知る。また、AIとビッグデータによるデータアナリティクスのプラットフォームとして、CBT(形成的評価のための学習者履歴を蓄積)、及び、LMS(総括的評価のためのeポートフォリオを蓄積)のシステム構成を知る。※CBT:Computer Based Testing、LMS:Learning Management System |
1-5 | 流通、製造、金融、サービス、インフラ、公共等におけるデータ・AI利活用事例紹介と同時に、ルールベース・機械学習・生成AIなどのAI技術の基礎的な仕組みを演習を通して理解し,社会における問題解決おいてAI技術が利活用されることで、どのような価値が生まれているかを見出す(小演習)。 また、教育、芸術、ヘルスケア等におけるデータ・AI利活用事例紹介と同時に、SP表によるテスト問題分析の実際(表計算ソフトを用いた演習)を通して、データサイエンスのサイクル(課題抽出と定式化、データの取得・管理・加工、探索的データ解析、データ解析と推論、結果の共有・伝達、課題解決に向けた提案)を体験的に理解し,学校教育における問題解決においてAI技術が利活用されることで、どのような価値が生まれているかを見出す(小演習)。 |
|
(4)活用に当たっての様々な留意事項(ELSI、個人情報、データ倫理、AI社会原則等)を考慮し、情報セキュリティや情報漏洩等、データを守る上での留意事項への理解をする | 3-1 | ネットワーク社会での倫理的・法的・社会的な課題、個人情報の取り扱い(個人情報保護、忘れられる権利、オプトアウト)、情報倫理(誹謗中傷、炎上、データのねつ造、改ざん、盗用、プライバシー保護)についての配慮を知る。AI社会での倫理的・法的・社会的な課題(公平性、説明責任、透明性、人間中心の判断、AIサービスの責任論)、生成AIの留意事項(ハルシネーション、データ・AI活用における負の事例紹介)、データセットの取り扱い(データマネジメント、データガバナンス)についての配慮を知る。 |
3-2 | 標的型攻撃メール訓練(悪意ある情報搾取、ユーザ認証とパスワード、アクセス制御)及び情報セキュリティ研修(情報セキュリティの3要素、暗号化と復号、情報漏洩等によるセキュリティ事故の事例紹介)を通じてデータを守るうえでの配慮を知る。 | |
(5)実データ・実課題(学術データ等を含む)を用いた演習など、社会での実例を題材として、「データを読む、説明する、扱う」といった数理・データサイエンス・AIの基本的な活用法に関するもの | 2-1 | 基礎的な統計についての概要(統計情報の正しい理解、母集団と標本抽出、相関と因果、仮説検定、打ち切りや欠測を含むデータ)を知る。データを読むことを通じて、尺度(量的変数、質的変数)、データの分布と代表値(平均値、中央値、最頻値、代表値の性質の違い)、散布度(分散、標準偏差、偏差値、外れ値、誤差の扱い)等の概念について理解する。 また、データのデジタル化についての概要(量子化、標本化、エンコード・デコード)を知る。デジタルデータで文字、音声、画像、動画がどのように表されるか、複数データをどのように統合して(マルチモーダル)処理するか理解する。 |
2-2 | 基礎的な統計の話(データの比較、実験計画法、様々なデータ表現、不適切なグラフ表現)とシミュレーション(相手に的確かつ正確に情報を伝える演習を含む)。データを実際に処理し、相関、回帰についての説明をスライド作成し、クラス全体へプレゼンテーションを行う。 また、数理科学の基本としての現象のモデル化とシミュレーションについて理解する。社会における問題解決において数理が利活用されることで、どのような価値が生まれているかを見出す。 |
|
2-3 | 社会で広く活用されている実オープンデータ(各種データ、統計情報、PISAデータ)を調べてデータの取得とデータの集計を行い、データ解析ツールを実際に活用して処理することで、データサイエンス技術によって社会が得られる実益を実証的に示し発表する(グループワーク)。 |
※授業方法等の詳細についてはシラバスをご参照ください。
サイトマップを開く